石けんの常識

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石けんは合成洗剤と決定的に違う特性がいくつかあります。それはある条件になると界面活性作用(油脂と水を混ぜ合わせる力)が簡単に失われてしまうんです。界面活性作用が失われやすいのは欠点にみえますが、体や環境にとっては長所になるんです。
たとえば、身体を洗うとき。石けんは水でさっと流せばもうそれ以上皮脂を取る力は残りませんね。また、使ったあと排水になれば、すぐに洗浄力を失いますから、浄化槽のバクテリアや水生生物に界面活性作用を及ぼす心配がないのです。これって、すごいことだと思いませんか。
では石けんの特性を挙げてみます。
1つ目は酸に弱いということです。
石けんはアルカリ性ですから、酸性の物質に出会うと中和されて洗浄力がなくなるということです。食器についた汚れはほとんど酸性。だから予備洗いが必要なんですね。
皮膚や衣服の皮脂汚れも脂肪酸という酸性物質が主となる酸性汚れです。だから、1回洗っただけでは汚れは取れないということになります。予備洗いや二度洗いが必要な理由です。
2つ目は薄まると汚れを手放してしまうということです。
石けんが洗浄力を発揮するためには、ある程度以上の濃度が必要なんです。これを臨界ミセル濃度といいます。そしてその濃度を下回ると、汚れを捕まえる力を失ってしまいます。これを「界面活性作用を失う」「失活する」と表現します。
石けんで食器を洗うとき、溜めすすぎをしてはいけない理由がこれです。一度薄まってしまうと食器に付いていた石けんが薄まって失活し、それまで捕まえていた汚れが水中に漂い出て食器にまたくっついてしまうんです。
これは洗濯でも洗顔でも同じことです。水に溶けている石けんが臨界ミセル濃度を下回っていると汚れは落ちないのです。臨界ミセル濃度に達すると泡が立ちはじめますから泡が目安になるわけです。
3つ目は冷水では石けんは溶けないことです。
石けんの原料の脂肪酸という物質は20度以下の冷水には溶けにくいんです。石けんが溶けなければ、洗浄力も十分に出ません。お湯で洗顔や、食器洗いをする理由はここにもあるわけですね。
4つ目はミネラルに弱いことです。
水にふくまれているカルシウムやマグネシウムといったミネラル成分が石けんには大敵です。
石けんは、このミネラル分と出会うと水に溶けない金属石けん、俗に言う「石けんカス」に変化してしまうんです。金属石けんは肌にひきしまるような爽快感を与えたり、髪の毛にツヤを与えたりと良い点もあるんですが、髪にたくさん残るとゴワついたり、きしみの原因になったりします。洗濯だと、色の濃い衣類を白く汚すこともあります。しかし、石けんには、ミネラル分に強いヤシ油石けん(ココナッツ石けん)がありますから、そういう材料を工夫することで克服できそうです。

石けんの選ぶときに、特に美容石けんを選ぶときは、高品質石けんを選ぶはずです。さて、その高品質は純石けん分が多いほど高品質、あるいは価格が高い石けんほど上等、と思ってませんか。実際にはそれだけではありません。また、使う場所、場面、環境によってその良さは変わってきます。
まず、肌に刺激を感じず、洗い上がりが気持ちよいものを選ぶことです。使用感は、原料油脂や製法(機械練り/枠練り)などによって大きく変わります。また、その時の体調や、個人の体質、香りの有無、季節などによって同じ石けんでも使い心地が違ってきます。
石けん分99%や98%の無添加石けんは、身体用に使いやすい製品が多いかもしれません。特に肌が敏感な人は、配合成分の数が多ければ多いほどトラブルが起きる確率も高まりますから、無添加か、それに近いシンプルな成分の石けんを選ぶとより安心ですね。
洗い上がりのしっとりさを求めるなら、グリセリンや植物エキスなどの保湿成分入りの石けんがいいかもしれません。石けんを作るときに油脂分を多めにしておき、できあがりに油脂分が残るよう計算して作られる「過脂肪石けん(スーパーファット石けん)」も保湿力が高いので人気があります。
美容石けん以外でも知っておいて損はありません。それぞれ油汚れを十分に落とせる洗浄力と、扱いやすさが選ぶポイントです。
台所洗剤では、肌の弱い方にとっては、手荒れが起きにくいということが大事ですね。合成洗剤と外見が似ている液体石けんは、合成洗剤からの切り替え時に心理的な抵抗感なく使い始められるようですが、洗浄力は強くありません。洗浄力が強いのはケイ酸塩や炭酸塩が入った固形石けんや粉石けんです。しかし、脱脂力が強いので、手荒れしやすい人はゴム手袋をして使うと良いでしょう。
洗濯用の石けんでは、炭酸塩(炭酸ソーダ)入りの粉石けんが適しています。炭酸塩などのアルカリ剤には、次のようなはたらきがあります。アルカリ剤を添加することで洗濯に使う純粋な石けん分が減り、環境に与える負荷が小さくなるんです。また、洗う場面ごとに石けんを使い分けることも必要です。毎日のお洗濯には、水温が20度くらいでも使える米ぬか石けんや廃油石けんが適していますが、泥汚れや油汚れには牛脂やパーム油主体の石けんが適しています。しかし、これらは洗いとすすぎ1回目までは水温40度以上が必要なので毎日のお洗濯向きではありませんね。ただし水温にさえ気をつければ、普段使いの石けん異常に重宝します。

石けんの泡は、いろいろな役目を果たしているんです。
まず、泡で汚れを浮かせます。石けんなどの界面活性作用で汚れを溶かして落とすのですが、それとは別に、泡にも汚れを対象物から吸い出すようにはがし取り、包み込む作用があるんです。特に洗顔、網戸洗い、カーペットの染み抜きなどでは泡をぬりつけて汚れを浮かせ、汚れを含んだ泡ごと洗い流したり拭き取ったりします。
ただし、洗濯機や洗い桶、たらいに石けん液を溜めてそこで洗うようなときは、汚れを浮かせるほど泡の力は強くありません。このようなときに汚れを落とすのは「泡」ではなく、石けん液の持つ洗浄力です。
ただし、泡があることは、石けん液が洗浄力を持っているかどうかの目安になります。泡の立つ濃度と洗浄力の出る濃度はほとんど同じですから泡が立っているということは汚れを落とす力があると考えても良いのです。
それ以外に洗顔やシャンプーの時に泡が空気を含んで皮膚や髪の毛を摩擦から守ってくれます。充分泡立ててと言われるのは、このクッション性で髪の毛同士がこすれ合うのを防ぎ、摩擦によるダメージから髪を守るためです。また、顔や身体も泡で包むようにして洗うと、摩擦による肌への刺激が少なくてすみます。

バブルとフォームの違いを理解している人は多くないと思います。日本語では、バブルは気泡、フォームは泡沫にあたります。
気泡は液体によって気体が閉じ込められた状態です。そしてその気泡が沢山集まった状態が泡沫です。具体的には、シャボン玉はバブル、洗顔用に泡立てたクリーム状の泡はフォームになります。コップに注いだビールからシュワシュワと湧き上がるのがバブル、それが集まってビール表面をおおう白い泡の層になったものがフォーム、ということですね。
泡沫ができるには十分な量の石けんが溶けていることが必要です。
ただの水をばしゃばしゃとかき混ぜても気泡はできますが、すぐに消えてしまいます。これはふつうの水では、一瞬気泡ができても表面張力がそれを破って平らで安定した状態に戻ってしまいます。
ところが、石けんのような界面活性剤はその表面張力を弱める働きがあるんです。すると、水面に泡が立ってもそれを破って真っ平らな状態に戻ろうとする力が足りなくなるんです。その結果、できた気泡は安定し、それが沢山集まって泡沫ができるわけです。
ただし、これはその水の中に十分な量の石けんが溶けているときの話です。皮脂汚れを石けんで洗うと、そのうち泡が立たなくなります。これは石けんは水中のミネラル分や酸と反応して洗浄力のない石けんカスになってしまったり中和されてしまったからです。だから、界面活性作用を失いますので当然、泡も立ちません。
十分な石けんを使い、よく溶かし、力強くかき混ぜてやる。このことが安定した気泡と泡沫を作るポイントということです。
石けんのトラブルの原因の一番は石けんカスです。しかし、その石けんカスのことを知っている人は多くないでしょう。トラブル解消のためには、まず、あなたを悩ませている石けんカスの正体をきちんと見きわめるべきです。
まず石けんカスの代表格は石けんが水道水のミネラル分(カルシウム、マグネシウム)と反応して脂肪酸カルシウム、脂肪酸マグネシウムなどになった金属石けんです。石けんと名付けられてはいますが、洗浄力はありません。それどころか、色の濃い洗濯物の洗い上がりを白く汚すこともあります。
洗顔やシャンプーの時の石けんカスは酸性石けんです。ベタベタした灰色っぽい物質で、汚れに対して石けんが足りないとできやすくなります。充分に泡立つまで石けんを足すことが必要になります。これを防ぐには、始めから二度洗いをしたり、予備洗いをすることで対処できます。
その他には、石けんの溶け残りや二次石けんと呼ばれる排水中の油分とアルカリの反応でできるもの。これはパイプつまりの原因になります。
このような各種「石けんカス」を放っておくと、カビや雑菌の温床になります。また、洗濯槽がカビだらけになると石けんの使用量が異常に増えてしまうこともありますから、対処法も知っておいて損はありませんね。。

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